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山下敦弘監督対談インタビュー

筧昌也 プロフィール
1977年11月2日生、東京出身。漫画&アニメ、モーショングラフィック、映画等多岐にわたり活躍中。『スクラップ』『ハライセ』はゆうばり国際ファンタスティック映画祭2000〜2001にて連続入選。2003年作品『美女缶』は同映画祭2003オフシアター部門にてグランプリを受賞。渋谷シネ・ラ・セットにて『ハリコマレ!』と同時上映を行い、大きな反響を呼ぶ。『美女缶』は、フジテレビ「世にも奇妙な物語05 春の特別編/美女缶」で、自らがセルフリメイク。人気俳優 妻夫木聡を主演に迎え、大きな話題を呼んだ。

山下敦弘 プロフィール
1976年8月29日生、愛知県出身。1999年作品『どんてん生活』は2000年ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2000 のオフシアター部門のグランプリを受賞したほか、各国の映画祭で上映、大きな笑いと熱狂で迎えられた。続く『ばかのハコ船』、つげ義春原作『リアリズムの宿』、そして問題作『くりいむレモン』、最新話題作『リンダ リンダ リンダ』と、立て続けにヒットを飛ばした新進気鋭の監督。



■企画について

筧(以下 K ) : 山下さんの映画に主演されている山本さんは最初の脚本段階から「あてがき」なんですか?

山下(以下 Y ): 今のところそうですね。でも「あてがき」として始めたのは2本目からです。

K : そうなんですか。何かそれにあたる人が僕にはいないので、ちょっとうらやましいですね。役者さんが決まってると脚本の進み具合が全く違いますよね。

Y : そうですね。彼の場合だとセリフを足していくのではなく、引いていく。言わせたい事をまず脚本で書いて、引き算していくんです。それを状況だったり他の人に言わせたりして・・・。

K : 見ている人に想像させていく?

Y : そうそう。でも僕は逆に企画書とかプロットとかが書けないんですよ。そこが問題点。役者がまずあって、ストーリーを考えることが多い。まずシナリオの第1稿をあげてから無理やり企画書を書くという感じです。企画書作成時って役者が決まってないから全然ストーリーが浮かばない・・。

K : 僕は逆だ。企画というかタイトルから入ることが多いです!すべてタイトルから思いつく。タイトルが面白いと後でいろんなアイデアを思いつくんです。『美女缶』にしても『ハリコマレ!』にしてもタイトルから内容が想像出来るじゃないですか。そういった意味では、いかに期待感がもてるような企画やタイトルを思いつく事が出来るか、というのは僕にとってすごく重要ですね。
でも、企画の時「面白い!」と思っても脚本にすると「あれ?」って事もあって・・・。(笑)それが悩みですね。


■キャラクター、脚本の大切さについて


Y : ちょっと関係ないかもしれませんが・・・。僕、筧さんの映画に出てくる女性のキャラ、すごく好きなんですね。あくまでキャラクターとしてですが、すごくハマる。でもあのキャストはどういう風に選んだのですか?

K : 『美女缶』でいえば、自分のタイプだけで選んだわけではないです。やっぱりあのタイトルだし、あのコ全てで映画全体を引っ張っていくので、みんなの中にある、最大公約数として誰が見てもかわいいと思えるコを選びましたね。(もちろん、僕も可愛いと思うし、好きですが(笑))あと、声です。演技というか質感といか。

Y : 声は大切ですよね!

K : 声も音楽的な要素の一つですし、セリフをいってもウソくさくない声。リアリティを感じさせる声が重要ですよね。あと、やはり長い時間観ていられるのはキャラクターやお芝居の力ですね。ストーリーだけじゃひっぱれない。

Y : 確かにそうですよね。

K : それにキャラクターや脚本をしっかり作っておくと、必ず面白い作品になる。極論しちゃうと、どんな風に撮影しても大丈夫かもしれない。例えば晴れの日の設定なのに雨が降ったとしても何とかなっちゃう、みたいな。

Y : 本当に脚本は大事ですね。 

K : でも、山下さんの映画はアドリブ的な要素が多い様に感じますけど。その辺はどうなんですか?

Y : いや、ほとんど脚本通りですよ。アドリブにみえるけど。

K : へぇー。それは意外ですね。

Y : だから撮影に時間がかかるんです。(笑)


■編集について


K : 編集についてはどうですか?

Y : 編集は客観的に見られる人が必要ですね。だから僕は一人でできないんですよ。

K : 僕は基本的に一人で編集するんですけど、時間をあけてみると良かったとか悪かったとかが判ります。でも企画から脚本、撮影までずっと関わっているから、なかなか客観的に見られないですね。思い入れもあるし。もし願いが叶うなら、自分の映画の記憶をリセットしてくれる魔法の機械がほしい・・・。(笑)

Y : 撮影の記憶をぬいてくれるやつ?

K : そうそう。そうすれば客観的に観て編集できるから。(笑)

Y : でもその思い入れが、良い結果につながる時もあったりするんで難しいですよね。(笑)


■最後に

K : ヨーロッパ映画みたいな難しい物にかぶれる時期ってありませんでしたか?大して面白いとも思わないのに。

Y : あったあった。(笑)

K : そんな自分が好きで、1,2本試しに作品を作ってみる。でも仲の良い友達とかに全然わかってもらえなくて、寂しくって、挫折感があって。みんなそういう通過地点ってあるじゃないですか?そこで「あこがれ」から「リアル」に切り替われるかどうかが大事ですね。

Y : そうですね。そういう事がなかったら、今までやって来られなかったかもしれない。

K : 自分に格好つけないで、正直に作りたい作品を作れるかどうか、ですよね。これが意外に難しいんですが。

Y : 最初は好きな作品の物のマネでもいいんだよね。とりあえず一生懸命、真剣に作ってみる。その時は100%の力を注ぎ込んで、「これ以上ない!」って思う位頑張る。そこから何か生まれてくると思います。

K : 引き分け試合じゃ、モノにならないから負けるなら大負けする位の作品を作ってみる。自分を出し切ることが重要なんじゃないかな。

Y : そうそう。そういう事を若いうちに経験するといい。すべてを出し切ったと思っても、ひとつの作品が終わるとまだまだ作れるものなんだよね。

K : 映画だと1本目より2本目がプレッシャーになっていく。前回よりいいものを作って自分のハードルをあげていかないといけないから。だからって毎回小出しにしてる余裕もないし。

Y : 作品作りって、それの繰り返しですよね。

   
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